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2011.03.12 Sat

東北、関東(私もですがww)の皆さん、ご無事ですかっ!?
津波とか余震とか、気をつけて下さい;ω;

で、空気読まずに安全な我が市wwww
ぶっちゃけ目立った被害が無いんですよね;;

そんな訳で、暇なので(←)SSの載せていきます!

あてんしょーんべるく!!
■独×モブ少女ネタになりますので苦手な方はバックしてください。
■がっつりシリアスになりますwwww
■スパン的な問題のツッコミは無しでお願いしまry


「兄さん……私は必ず兄さんの分まで、」
 
セミロングくらいの美しいブロンドを風に靡かせて、少女は小さく呟いた。
少女の手にはどう見ても似つかない短刀(メッサー)を握っていた。
そこに書かれていた名は【Auguste Rosenberg】――奇しくも第一次世界大戦で散った男の名前。
そして少女はひとつの決意と短刀(メッサー)をも胸に抱き、扉を開けた――。
 
その頃時を同じくして、欧州では又もや戦渦が訪れていた。
そう――それは第二回目の世界大戦。
死んだ兵士達の無惨で凄惨な亡骸の上を踏み歩き、また生きた兵士達が行進する。
それは凱旋でもなければ、条約を締結しに行くわけでもない――、今から正義を振り翳し殺戮に明け暮れるのだ。
一歩、また一歩と敵が占拠している領地へと足を踏み入れる。
ここで迷ったら死が待つのみ、誰であれ躊躇せずに殺せ――それがドイツ陸軍からの命令だった。

もちろん彼らとて、その命令には服従する――、
 
「――でも兄さん、女や子供は見逃すだろう?」
「は?んー…まぁ、そうだな」
「……」
「弱い者に手出しするのは俺達の使命じゃねぇってことだろ。どうしたんだよ、ヴェスト?」
「別に、何でもない」
「おい、待てって……」
「向こうを見てくる。兄さんは先に戻っててくれ」
「あ、あぁ。気をつけろよ、……どうかしたのか、あいつ」
 
何か胸に引っかかるものがあった。
解せないと言うことなのか、それは自分でも分からなかった。
そんな時、不意に人の気配を感じた、今までの訓練同様に銃を構える。
 
「っ……、う、」
「……(子供か?)」
 
が、しかしそれは小さくすすり泣く少女の声色、蹲って震えていた。
ルートは銃を下ろし、少女に近づく。
 
「こんなところでどうした?家族は?……腕怪我してるじゃないか、立てる――」
「(嘘よ、兄さんに似て……)ありがとう、優しい――お兄さんっ!!!」
 
その瞬間、少女が組んでいた腕を解いた。
その手には短刀(メッサー)、向けられた刃先は鋭利で冷たかった。
交わしながら、ルートはほんの隙をついて少女の腕を捻り上げた。
少女の嗚咽が漏れる。
 
「あ、いや……離してっ、いやぁ!!!」
「何の真似だ、それにその短刀(メッサー)は陸軍のものじゃないか……、貴様どうやって手に入れた」
「っ、これは私の兄さんの――【Auguste Rosenberg】の形見よ!!貴方達が起こした戦争で死んだの、貴方達が私の兄さんを殺したのよっ!!だって、そうじゃない!!!」
「オーギュスト……ローゼンバーグ?」
「そうよ、私の兄さんの名前よ!!!兄さんは人より、少し身体が弱かったのに召集されて――帰ってきたと思ったら“遺体は見つからない、ただこれだけが落ちていたからご遺族に”って……、」
「……」
「無知で馬鹿な私でも解る、戦争は何も生まないのっ!!ねぇ、そうでしょう……」
「……それは、」
「……お願いよ、兄さんを返してよ!!兄さんを……私のたった一人の家族を返してよ――!!!」
 
こんな少女が――きっと元は純白であったであろうワンピースを泥に汚して、花を摘んで朗らかに微笑んでそうな、こんな少女が今、自分に語っていることは現実なのだろうか?
夢かもしれない、そんな錯覚さえ起きる程、少女は訴えた。
 
「きっと貴方達は私なんかよりも、ずっとずっと頭が良いはずだわ。なのに、どうしてそんな簡単なことに気付かないの……!?」
「……っ」
「兄さんは“必ず帰ってくる”って行ったのよ?……兄さんが約束なんて破ったことなかったのに――」
 
『また行くのか、兄さん』
『ルッツは心配性だな、まったく。俺が可愛い弟の元へと帰って来ねぇわけねぇだろう?』
『だって、』
『ほら、笑って送り出してくれよ。な……ルッツ』
『……行って、らっしゃい、兄さん』
そっと手を差し出す。
『――行って参ります、我が愛しい帝国様』
それは約束の口付け。
帝国に捧げられた王国の忠誠の証――。
『……』
 
「――だから、私は貴方に復讐しようとしたのよ。兄さんの仇を取るためにね、でももう終わりね。その銃で……私を殺すんでしょう?良いわ、貴方はとても兄さんに似ている――(嗚呼、兄さんにやっと会え、っ!?)」
 
ルートは自分の首元に付けている鉄十字(クロイツ)を外して、チェーンで少女の首に手を回してつける。
それは殺戮行為じゃない、とても優しい感覚。
 
「動くな、今止めてる。……それはお前にやる、それも陸軍の装飾だ。俺からで悪いが、兄の形見にでもすると良い。――嫌なら捨てて構わん、好きにしろ」
 
ずっと前に彼がそうしたように、優しく――、
 
『これが、騎士の証。俺達は重いものを背負って生きていく、それをも全て守れる者にしか与えられないもの――』
『守れる、者……』
『まっ……やっぱりルッツは似合うな、将来が楽しみだな、うんうん』
『……』
『――大丈夫、お前は強いだろう?』
!!……Ja!!』
『――それでこそ、ドイツ帝国だ』
 
少女は自分の身に何が起こったのか、はたまた彼は何故自分を殺さないのか。
唖然としている少女は幾重もの疑問の茨に絡まった。
考えている暇も無い、彼は自分から踵を返そうとしている――ここで別れたらもう会いないかもしれない。
少女はふら付く足を引き摺って、走った。
 
「ありがとう――お兄さん、この世界もまだ捨てるもんじゃないって、解った気がした」
「……だったら、俺がお前の兄の分まで戦って、」
「もう良いの、私はもう……生きていける気がするから――」
 
ルートは緩く敬礼をした、最後に少し手を振ったように下へ下ろす。
少女はただ去って行く彼の背中を、自分の兄の背中と重ね合わす――。
 
「兄さん、もしかしたら兄さんは幸せだったのかもしれないね……、」
 
少女はその蒼瞳に涙を溜めて、空に向かって呟いた。
そして付けてもらった鉄十字(クロイツ)を外して、不意に裏を見る。
そこには【Ludwig Beilschmidt】の文字が刻まれていた。
 
「……まさか、彼がっ――」
 
「――ヴェスト!!お前何処に行ってたんだ、心配したんだぞ?」
「……悪かった」
「お前、鉄十字(クロイツ)はどうした」
「あ……さっき落としたみたいだな……。大丈夫、兄さんからもらった鉄十字(クロイツ)は保管してある」
「ったく、当たり前だろって――」
「……あぁ、(名前は――聞くような場面じゃなかったし、仕方ないか)」
 
そしてその後、欧米の介入や時代の趨勢によってドイツは敗戦国となり、その後賠償金や領土割譲問題で揺らぐこととなる。
もう二度と、死んだ兵士達の無惨で凄惨な亡骸の上を踏み歩き、生きた兵士達が行進するような時代は繰り返させない――それこそドイツ陸軍からの命令。
 
そして時は流れ、安寧の日々が続いていた頃、ルートは街へ出かけた。
と言っても、同居人が迷子になったとかで迎えに行くのだ。
 
「全く、ローデリヒのやつ毎回毎回迷子になるのも、どうかと思、う――」
 
そんな時、自分の目を横切った母子に不意に視線がいく。
 
「ねぇねぇ、ママはいつもそのネックレスしてるけど、そんなに大事なものなのぉ?」
「これ?これはねぇ、大切な人からもらったものだから付けているのよ」
「大切な人?」
「そう、そうね。……ならオーギュストはこの国が好き?」
「もちろんだよ!」
「なら、ママも同じよ――、ママもこの国が大好きってことよ」
「――おぉ、クリスティーネ!!遅くなって悪かった、仕事が立て込んでてな」
「パパ遅いよ~」
「悪かった、悪かった。そんなに怒るな、よしオーギュストの欲しいもの、パパが特別に買ってやるぞ」
「本当!?嬉しいっ!!」
「まぁ、貴方ったらぁ――」
 
ごく一般の幸せそうな家族だった。
きっとあの時の少女に間違いはない――でもあえて声はかけなかった。
国(自分)と人(彼女)では生きる尺度が違う。
 
そして、もう一つ――彼女の兄は自分をかばって亡くなったことに気付いたから。
【Auguste Rosenberg】、ドイツ陸軍の将校だった。
将校の地位に就きながらも、振る舞いはまるで似つかわしくなかった。
無事に帰れたら会いたい人がいる――そう、あの夜に話していたのはきっと彼女だったのだろう。
自分が彼を殺した――それは強ち相違にはあたらないのかもしれない。
 
それでも、彼女が元気で幸せに今もこの国で暮らしていることが、何よりの幸せだったから。
 
「はぁ……俺も平和ボケしてきたのか?」
 
その日の空は、どこまでも澄んで飲み込まれそうな程の、彼女の瞳の色だった――。
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1994/04/16
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自己紹介:
将来の夢はフリードリヒ大王のお嫁さんになること←
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